思い出袋
私の書斎の引き出しの中の青春時代の残骸
幼い日の宝物箱に似た がらくた入れ
錆びついた鍵 表紙のちぎれた詩集
安物の首飾り 書きかけの下手な小説
あの夏の終りの海辺の貝殻のかけら
通いつめたジャズ喫茶
のマッチ
とうとう出せなかったラブレター
けれど それらは
いつとはなしに
少しずつ消えてゆく
思い出の品々を なにもかも捨てずに
生きていくことはできないので
ひとは みな 心の中に
大きな思い出袋を持っていて
大切な品物を捨てるたびに
その思い出袋の中に
懐かしい記憶だけをしまいこむ